タロット
タロット……一番知られている占いでしょう

タロット
タロット占いは、今では占いや自己分析の道具として、世界中で親しまれています。しかし、そのカードがどのように生まれ、どんな道をたどって現在の形になったのかを知っている人は、意外と多くありません。
タロットは、もともとは遊びのためのカードでした。それが時代の流れの中で、神秘的な意味を与えられて。そして占いの道具として使われるようになっていきます。そこには、多くの思想家や占い師、芸術家たちの考えや想像力が深く関わっていました。
ここでは、タロットがどのようにして「占いのカード」になり、どのように広がっていったのか?これを、できるだけ分かりやすく紹介していきます。タロットの歴史を知ることで、カードを見る目も、少し変わってくるかもしれません。
構成
現代では、78枚1組が一般的で、まずは寓意画が描かれた22枚の大アルカナ。つづいてワンド(棍棒)、カップ(杯)、ソード(剣)、ペンタクル(五芒星)のスート(マーク)の4組に分割される56枚の小アルカナ(数札)で構成されます。
用途
タロット占いは、78枚のカードを使って、今の気持ちやこれからのことを考える占いです。カードには、人生の中で起こるさまざまな出来事や気持ちを表した絵が描かれています。カードの意味を読み取ることで、悩みや問題について考えるヒントを得ることができます。
タロット占いは、自分の気持ちを理解したり、大切な選択をするときの参考として使われています。カードの並び方や組み合わせを見ることで、心の中の状態や周りの状況をいろいろな角度から考えることができます。そのため、心のケアの方法のひとつとして、カウンセリングなどで使われることもあります。
タロットの歴史
タロットの始まり
ところでタロットカードの起源は15世紀のイタリアにさかのぼると言われている。当初は、ゲーム・娯楽の目的で使用されていた。だが、18世紀になると占いの道具として認識されるようになった。
ゲームの道具からオカルトへ
今のようなカード占いとしてのタロットは、18世紀ごろに始まりました。人々は絵札と数字のカードの組み合わせに、不思議な意味があると考えるようになります。
フランスでは、タロットは古代エジプトが起源だと考える人たちが現れました。アントワーヌ・クール・ド・ジェブランは、タロットはエジプトで生まれたものだと主張しました。また、ド・メレ伯爵も同じように、古代エジプトの「トートの書」を表したものだと考えました。こうした考え方によって、タロットは遊びから、神秘的なものへと変わっていきました。
彼らの「エジプト起源説」には、はっきりした証拠はありませんでした。しかし、神秘的な考え方が多く含まれていたため、想像で補い、カードの意味を自由に広げていきました。このようなタロットの考え方は、エッティラに受け継がれていきます。
タロットのオカルト化
エッティラの「エジプト・タロット」と、いろいろなカードは、その後も作られ続けました。そして19世紀の終わりごろ、オカルト文化が広まる中で、タロットは強い存在感を持ちます。
19世紀のオカルティストであるエリファス・レヴィは、タロットを単なる占いの道具ではなく、「古代から伝わる書物」であり、「神秘を解くための鍵」だと考えました。彼は22枚の絵札を、22のヘブライ文字と無理に結びつけました。さらに当時広まっていた「アストラル光」と関連づけて、タロットを魔術と結びつけました。
その結果、タロットはユダヤ教のカバラとも関係づけられるようになりました。こうしてタロットは、オカルトの世界の中で語られる存在になりました。
イギリスとタロット
イギリスでは19世紀のはじめごろから、オカルトの知識が広まっていました。しかし、フランスで発展していたタロットについては、まだあまり知られていませんでした。
思想家マッケンジーは、フランスのエリファス・レヴィから、タロットを見せてもらいます。そして、オカルト・タロットをイギリスに紹介しようと、本を出す準備を進めていました。しかし、その計画は完成しないまま、彼は亡くなってしまいます。
マッケンジーが残した、暗号で書かれたタロットの原稿や儀式の内容は、友人でありフリーメイソン系の薔薇十字団のメンバーだったウィリアム・ウィン・ウェストコットに引き継がれました。
ウェストコットたちは、この原稿を「暗号文書」と呼び、後の「黄金の夜明け団」の基礎としました。そこに書かれていた、タロットとヘブライ文字の関係は、大切な秘密として伝えられました。団員たちはこの考え方を発展させ、広く広めていきました。
その流れの中で生まれたのが、ウェイト=スミス版タロットや、トート・タロットです。現在よく使われている「ケルト十字展開法」にも、黄金の夜明け団が深く関わっています。
マルセイユ版タロットの出現
フランスで最も古いタロットとして知られているのは、1557年にリヨンで作られた「ケイトリン・ジョフロイ版」です。ただし、このカードは絵のデザインがかなり独特で、「マルセイユ版」の元とは言えないものです。
現在よく知られている「マルセイユ版」とほぼ同じ絵柄が作られたのは、1650年ごろのパリで発行された、「ジャン・ノブレ版」が最初だと考えられています。このカードこそが、確認できる限りでのマルセイユ版の元祖といえます。
タロット占いについての最も古い記録は、18世紀前半に作られた、方法を説明した紙です。この記録から、タロットカードにはすでに1枚ずつ意味が決められていたことが分かります。ただし、この頃は、まだ主にゲームとして使われていました。
このようなカードは、作られていた場所の名前から「マルセイユ版」と呼ばれるようになります。またこの時代は、フランス革命の前後という社会が不安定な時期です。占い師エッティラが活躍していた頃とも重なります。人々の間で、タロットを神秘的なものと考える心が強まり、占いに使われることも増えました。
当時のパリの占い師たちにとって、タロットは不思議で異国的なものに見えていました。というのも、この頃には遊ぶ習慣がほとんどなくなっていたからです。
タロット第1の革命
エッティラ(エテイヤ)やその周りの人々は、タロットにオカルト的な考え方を取り入れました。その結果、新しい考え方にもとづくタロットが生まれ、占いとして使われるようになります。ジェブランが「タロットは古代エジプトが起源だ」と主張する。するとエッティラはそれをもとに、まったく新しい解釈のタロットを作り出しました。
エッティラは、それまでのカード占いをまとめ、体系的なタロット占いを作り上げました。1783年から1785年にかけて、『タロットと呼ばれるカードのパックで楽しむ方法』という本を出版しました。彼はエジプト起源説をもとに、タロットに神秘的な意味を与えました。
またエッティラは、カードを上下逆にして読む「逆位置(リバース)」という読み方を、占いに初めて取り入れました。さらに、小アルカナの4つのスートを「火・水・風・地」という四つの元素に結びつけました。
彼は占星術の関係もはっきりと示しました。大アルカナのうち3枚を除いた19枚を用います。7つの惑星や12星座を対応させ、タロットを使って占星術を考える方法を生み出しました。これは「机上の占星術」とも呼ばれています。
これらの変化によって、エッティラは、現在につながるタロットの創始者となりました。彼は独自の考えにもとづき、カードの順番を大きく入れ替え、絵柄も変更しました。そして、占い専用で、見た目にも美しい「エッティラ版」を作り出しました。
タロット第2の革命
19世紀イギリス
イギリスでは、19世紀のはじめごろからバレットなどによる魔術書が多く出版されました。それによりオカルトの知識が広まっていました。また、占星術師ラファエルが発行していた年鑑を通して、知られるようになっていました。さらに、リットンのオカルト小説によって、薔薇十字思想への関心も高まっていました。
しかし、フランスで発展していたタロットについては、ほとんど知られていませんでした。
こうした中、思想家マッケンジーは、フランスのレヴィの自宅を訪れ、図やタロットを見ました。彼は、オカルト・タロットをイギリスに紹介しようと考え、本を出す準備を進めました。
しかし、マッケンジーは酒や借金を抱え、計画を実現できないまま、亡くなってしまいます。
彼が残した、暗号で書かれた原稿や儀式の内容は、友人であり英国薔薇十字協会の会員だったウィリアム・ウィン・ウェストコットに引き継がれました。ウェストコットたちはこれを「暗号文書」と呼び、「黄金の夜明け団」を作るための基礎としました。
これに書かれていたタロットとヘブライ文字の関係は、団の秘密として伝えられました。そして、この中から、後に有名となるいくつものタロットが生まれていくことになります。
ウェイト=スミス版の出現
「第二の大きな転換点」といえるのが、「ウェイト=スミス版」の登場です。これは、黄金の夜明け団の考え方と、フランス系タロットの特徴を組み合わせた構造です。アーサー・エドワード・ウェイトが作り、パメラ・コールマン・スミスが絵を描いたものです。
このタロットは黄金の夜明け団の流れをくみました。スートは、「剣(ソード)」「棒(ワンド)」「杯(カップ)」「ペンタクル」と呼ばれています。
このデッキには、いくつもの大きな特徴があります。まず、「イギリスで商業的に販売された、最初の本格的な占い専用タロット」であったことです。また、エッティラ(エテイヤ)の伝統から離れた、まったく新しい流れのタロットでもありました。
ウェイト=スミス版は非常に成功し、最も人気のあるタロットデッキとして使われ続けました。そして現在でも、世界中で販売され続けています。その後に作られた多くのタロットは、パメラ・スミスの絵の構成や表現を元にしています。
タロット研究者であるデッカーとダメットは、「オカルト・タロットの標準形」と評価しています。
タロット第3の革命
歴史の「第三の大きな転換点」は、「アルフレッド・ダグラス版タロット」です。このカードは、シンプルで力強いデザインと、原色ではっきりした色づかいが特徴でした。
このデッキの大ヒットをきっかけに、タロットは「決まった形」のものだけではなくなります。映画や物語、宗教、芸術など、さまざまなテーマを取り入れた、自由な発想のオリジナルデザインのカードが、次々と作られるようになっていきました。
その後、映画『007 死ぬのは奴らだ』に登場した「007タロット」をはじめ、ヒンドゥー教の考え方をもとにした「ダーキニー・オラクル」、日本の浮世絵をテーマにしたもの、不思議の国のアリスを題材にしたものなど、多くの個性的なタロットが生まれました。また、画家サルバドール・ダリがデザインした巨大なタロットや、心理学者ユングの考えを取り入れた「ユングのタロット」など、芸術や心理学と結びついた作品も登場しています。
このように、タロットは時代とともに形を変えながら、現在もなお、新しいデザインや考え方を取り入れたカードが作られ続けています。
まとめ
タロットは、遊びのカードとして生まれました。神秘的な解釈が加えられ、占いの道具として発展してきました。エッティラによる体系化、ウェイト=スミス版による完成、現代における自由なデザインの広がり。いくつもの大きな転換点を経て、現在のタロットがあります。
現代のタロットは、特定の宗教や思想に縛られるものではなく、占い、心理学、芸術など、さまざまな分野と結びついて使われています。そのため、同じカードであっても、使う人によって読み方や意味は少しずつ異なります。
タロットは「未来を当てるための道具」というだけではありません。自分の気持ちを見つめ直し、考えるきっかけを与えてくれる存在でもあります。その長い歴史を知ったうえでカードに向き合うことで、タロットはより身近で、奥深いものとして感じられるでしょう。
トート・タロット
トート・タロットは、20世紀の魔術師アレイスター・クロウリーが考えをまとめ、画家のフリーダ・ハリスが約5年をかけて制作したカードです。カードには多くの象徴や秘密の意味が込められており、「史上最高のタロット」と呼ばれることもあります。とても奥が深いため、一般的なウェイト=スミス版とは異なる、独自の読み方が特徴です。
トート・タロットのカードには、非常に細かく、複雑な象徴が描かれています。そのため、占いの結果を見るだけでなく、自分自身の成長や、心や精神の世界を探求するための道具としても使われます。
これでは、大アルカナを「アテュ(Ateh)」、小アルカナを「スモール・カード」、人物札を「コート・カード」と呼びます。名前の付け方からも、一般的なタロットとは少し違う考え方があることが分かります。
トート・タロットという名前は、古代エジプトの知恵の神「トート(トト)」に由来しています。内容には、黄金の夜明け団の教えや、クロウリー独自の思想である「テレマ思想」が強く反映されています。そのため、象徴が多く、難しいと感じられることもあります。
しかし現在では、初心者向けの解説書や実践ガイドも多く出版されており、初めての人でも少しずつ理解しながら使うことができます。時間をかけて向き合うことで、深い学びと気づきを与えてくれるタロットだといえるでしょう。

